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豆知識
インボイス登録をきっかけに課税事業者になった小さな会社の多くは、消費税を「売上にかかる消費税の2割だけ納める」2割特例で申告してきました。この特例は令和8年(2026年)9月30日までの日を含む課税期間で終わります。ここでは、法人の一人社長がその次にどの計算方式を選べるのか、届出の期限はいつか、同じタイミングで変わる仕入側の経過措置は何かを、国税庁の一次情報にそって整理します。
情報提供であり、税務助言ではありません。 方式の選択は会社の売上構成と仕入で結果が変わります。判断は税理士にご相談ください。
最終確認: 2026年9月18日 / 出典: 国税庁 2割特例の概要、インボイスQ&A 問115(2割特例の適用ができない課税期間①)、同 問117(2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択)、令和8年度税制改正特集(インボイス制度)、タックスアンサー No.6505 簡易課税制度。
2割特例は「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」に適用できます(問115)。日付ではなく課税期間で切れる点が大事です。
| 決算月(課税期間 = 事業年度の場合) | 2割特例が使える最後の課税期間 | 次の方式が必要になる最初の課税期間 |
|---|---|---|
| 3月決算 | 令和8年4月1日〜令和9年3月31日 | 令和9年4月1日〜 |
| 9月決算 | 令和7年10月1日〜令和8年9月30日 | 令和8年10月1日〜 |
| 12月決算 | 令和8年1月1日〜令和8年12月31日 | 令和9年1月1日〜 |
つまり「2026年10月からいきなり使えなくなる」のではなく、2026年9月30日を含む課税期間までは丸ごと使えます。9月決算の会社だけが、2026年10月からの期で最初に切り替わります。
なお、次のような課税期間には初めから2割特例を使えません(問115)。一人社長で該当しやすいのは③です。
2026年の税制改正で、2割特例に続く3割特例が設けられました。ただし対象は「インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者」の令和9年分・令和10年分で、納付税額を売上税額の3割にできる、というものです(令和8年度税制改正特集)。法人の一人社長は対象外です。法人は、2割特例が切れた課税期間から、次の2つのどちらかで申告します。
| 方式 | 納付税額の考え方 | 使える条件 | 一人社長での向き不向き |
|---|---|---|---|
| 本則課税 | 売上の消費税 - 仕入・経費の消費税(インボイスの保存が前提) | 届出なし。誰でも | 外注や仕入が多い、設備投資の年がある会社 |
| 簡易課税 | 売上の消費税 - 売上の消費税 × みなし仕入率 | 基準期間の課税売上高 5,000万円以下 +「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出。原則2年間は継続(No.6505) | 経費が少ないサービス業・コンサル・受託開発など、みなし仕入率が実態より高い会社 |
みなし仕入率は事業区分で決まります(No.6505): 第1種 卸売業 90%、第2種 小売業など 80%、第3種 製造業・建設業など 70%、第4種 その他(飲食業など) 60%、第5種 サービス業・運輸通信業・金融保険業 50%、第6種 不動産業 40%。
以下は架空のサンプルです。年間の課税売上 660万円(税込、標準税率のみ)、経費のうち課税仕入 220万円(税込、すべて適格請求書あり)、業種はサービス業(第5種)とします。売上の消費税は 60万円です。
| 方式 | 計算 | 納付税額(国税+地方税の合計) |
|---|---|---|
| 2割特例(切れる前) | 60万円 × 20% | 12万円 |
| 簡易課税(第5種 50%) | 60万円 - 60万円 × 50% | 30万円 |
| 本則課税 | 60万円 - 20万円 | 40万円 |
この会社では簡易課税が有利ですが、仕入割合が5割を超えるなら本則課税のほうが小さくなります。設備投資で大きな仕入が出る年は本則課税でないと還付を受けられません。どちらが有利かは業種と仕入の実態次第で、しかも簡易課税は原則2年間続けることになります。
簡易課税は原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出書を出す必要があります(No.6505)。ただし 2割特例(または3割特例)を使った課税期間の翌課税期間に簡易課税へ移る場合は特例があり、その翌課税期間の確定申告期限までに「その課税期間から簡易課税を受ける」旨を書いた届出書を出せば、その課税期間の初日の前日に提出したものとみなされます(問117、28年改正法附則51の2⑥)。翌課税期間が令和8年9月30日以前に終わる場合は、その課税期間中が提出期限です。
国税庁の問117が法人向けに挙げている例:
言い換えると、2割特例の最後の課税期間の申告を終えてから「次の期は簡易課税にしよう」と決めても、次の期の申告期限までなら間に合います。その次の期からは通常のルール(前期末まで)に戻るので、この一回だけの猶予です。
免税事業者など、インボイスを発行しない相手からの仕入について、本則課税では仕入税額の一定割合を控除できる経過措置があります。令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、控除できる割合が見直されました(令和8年度税制改正特集)。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 8割 |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 7割 |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 5割 |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 3割 |
あわせて、一の相手先からの課税仕入れの合計額(税込)がその年または事業年度で 1億円を超える部分には適用できなくなります(改正前は10億円。令和8年10月1日以後に開始する課税期間から)。一人社長の規模では上限に触れることはまずありませんが、個人の外注先にインボイス登録がない場合、本則課税での控除は2026年10月から7割になる点は、本則課税を選ぶ会社の試算に入れておく必要があります。簡易課税と2割特例では、仕入側のインボイスの有無は納付税額に影響しません。
一人社長の消費税タブは、原則課税・簡易課税・2割特例のそれぞれで納付税額を計算し、e-Tax 用の送信ファイル(XTX)を出力します。方式の詳細と四半期ごとの流れは 消費税申告 にまとめています。課税期間を3か月に短縮している会社は、上の①〜③のとおり2割特例の対象外なので、本則か簡易かの試算から始めてください。届出の提出そのものは税務署(e-Tax)で行い、判断は税理士にご相談ください。
日付ではなく課税期間で切れます。令和8年9月30日までの日を含む課税期間には丸ごと使えるので、3月決算なら令和9年3月期まで、12月決算なら令和8年12月期まで使えます。10月から最初に切り替わるのは9月決算の会社です。
使えません。令和8年度税制改正で設けられた3割特例は、免税事業者からインボイス登録で課税事業者になった個人事業者の令和9年分・令和10年分が対象です。法人は2割特例の次の課税期間から本則課税か簡易課税で申告します。
2割特例を使った課税期間の翌課税期間に限り、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、その課税期間の初日から簡易課税を適用できます(翌課税期間が令和8年9月30日以前に終わる場合はその課税期間中)。その次の期からは前期末までの通常の期限に戻ります。
売上の消費税に対する仕入の消費税の割合が、みなし仕入率(サービス業なら50%)より高ければ本則課税、低ければ簡易課税が有利になるのが基本です。設備投資の年は本則課税でないと還付が受けられず、簡易課税は原則2年間続きます。数字で試算してから判断してください。
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